
仏Vaonis社は、2024年3月26日に次世代スマート天体観測ステーション「Vespera II」を発売しました。Vespera IIは、わずか数分で自動的に向きを調整し、天体の配置を認識する自動初期化機能や、カタログ内の数千もの天体から即座にターゲットを見つけて導入・追尾する自動導入・追尾機能を搭載するスマート望遠鏡です。
また、観測中の気温変化にも対応するライブオートフォーカス機能や、リアルタイムで鮮明な画像を表示するライブ画像強化機能など、天体観測を快適にサポートする先進的な機能を備えています。
Vespera IIの特長
Vespera IIは、最新世代のイメージセンサーや高品質な光学系、Vaonis社独自のライブモザイク撮影テクノロジーを組み合わせることで、他のスマート望遠鏡の追随を許さない画像を実現しています。主な特長は以下の通りです。
- 自動初期化機能: わずか数分でユーザーの位置に基づいて向きを調整し、天体の配置を自動認識
- 自動導入・追尾機能: アプリ内のカタログに収録された数千もの天体の中から目的の天体を選択するか、赤道座標を指定するだけで、即座にそれを見つけて導入・追尾
- ライブオートフォーカス機能: 観測中の気温変化にも対応して常に星を鮮明に捉える
- ライブ画像強化機能: 不適切な画像を自動的に排除し、経験豊富な天体写真家が使用するスタッキング技術を良好な画像にのみ適用することで、リアルタイムで鮮明な画像を表示
また、Vespera IIには、Vaonis社の特許技術であるCoval ENSライブモザイク撮影機能が搭載されており、より広い視野と自由なフレーミングを可能にしています。
新しいVespera IIは、8.3メガピクセル、Ultra-HDのイメージセンサーを搭載。高画素データにより構図やレタッチの自由度が高まります。天体写真愛好家の皆さんにもおすすめです。3/26発売。予約受付中。https://t.co/nQQWOidRlD pic.twitter.com/uuwM3g0rNp
— Vaonis Japan (@Vaonis_jp) March 16, 2024
ライブモザイク撮影機能とは?
Coval ENSライブモザイク撮影機能について詳しく説明します。Coval ENSは、Vaonis社の特許技術であり、Vespera IIに搭載されている画期的な機能です。このライブモザイク撮影機能により、Vespera IIは望遠鏡の物理的な視野に制限されることなく、より広い範囲の天体を撮影することができます。具体的な特長は以下の通りです。
- 視野を広げることができる
- フレーミングを自由に設定できる
- 画質が向上する
自動ライブパノラマ機能を使うと、Vespera IIは自動的に複数の画像をつなぎ合わせて、より広い視野の画像を生成します。これにより、望遠鏡の物理的な視野に縛られることなく、より多くの天体を撮影し、新しい構図を探求することができます。
モザイクモードの仕組み
望遠鏡には、焦点距離とセンサーのサイズによって決定される固定の視野があります。Vesperaの場合は1.6°×0.9°です。この大きさの視野では、アンドロメダ大銀河や小マゼラン雲のような大きな天体を1枚の画像に収めきれません。
しかし、このモードを使うと、望遠鏡を小刻みに動かしながら多数の画像を自動的に撮影し、それらの画像を高度な画像処理技術でつなぎ合わせることで、普通の場合の数倍から数十倍も広い範囲の宇宙のパノラマ画像を作成することができます。
例えば、アンドロメダ銀河、ロゼット星雲、カリーナ星雲などの大きな銀河・星雲のより完全な画像を撮影したり、大オリオン星雲や馬頭星雲の周辺環境をより詳細に探索したり、同じ画角でラグーン星雲と三裂星雲などの星雲のセットを撮影もできます。また、銀河団も大きな領域が撮影可能です。
モザイク作成は完全自動
観測開始後、観測ステーションが指定された領域を徐々にスキャンしながら画像をキャプチャし、モザイクを構成します。画像がキャプチャされるにつれて、画像の大きな重複部分を使用してこれらの領域を重ね合わせます。
観測ステーションは拡大された視野全体をスキャンし、高品質のモザイク画像を映し出します。観測を継続すると、追加のスキャンが行われ、最終画像の全体的な品質が徐々に向上します。
この一連の処理は完全自動で行われるため、ユーザーは撮影前の設定さえ行えばよく、手軽に宇宙のパノラマ画像を楽しむことができます。
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話題のスマート天体望遠鏡「Vespera Ⅱ」を使って、目には見えていない宇宙に飛び込んでみませんか🚀
Vaonis製品だからこそ出来るライブパノラマ撮影で、より自由度の高い探検が可能に👀 pic.twitter.com/UwsttnIYBB
ライブモザイクモードで撮影できる画像の解像度
Vespera IIのライブモザイクモードでは、最大24メガピクセルの画像を撮影できます。具体的な解像度は以下の通りです:
- 通常モード: 3840×2160ピクセル(約8.3メガピクセル)
- ライブモザイクモード: 最大6400×3600ピクセル(約24メガピクセル)1
つまり、ライブモザイクモードを使うことで、望遠鏡の物理的な視野を超えた広い範囲の天体を、最大24メガピクセルの高解像度で撮影することができるのです。
ライブモザイクモードで撮影できる画像のフォーマット
- JPEG
- FITS(*) (RAW画像)
- TIFF (16ビットRAW画像)
つまり、Vespera IIのライブモザイクモードでは最大24メガピクセルの高解像度画像を撮影でき、FITS形式やTIFF形式のRAWデータとして保存することができます。
これにより、後処理の際に高度な画像編集を行うことが可能になります。pixInsightなどの天体写真画像処理ソフトウェアで加工・編集することで、撮影画像の真髄をあますところなく引き出すことができます。
FITS形式のデータとは?
Vespera IIでは、FITS形式のRAWデータを保存することができます。
FITS(Flexible Image Transport System)形式は、天文学分野で広く使用されている標準的な画像フォーマットです。FITSデータには、画像データだけでなく、撮影時の各種メタデータ(撮影日時、赤経赤緯、露出時間など)も含まれています。
後処理のRAWデータについて
Vespera IIでは、自動でスタック処理やノイズ除去処理を行い、8bit JPEGの天体写真画像を生成しますが、同時にFITS形式のRAWデータも本体内ストレージに保存することができます。
FITS形式RAWデータ保存機能は、天体撮影の幅を大きく広げる機能と言えるでしょう。初心者から熟練者まで、誰もが高度な画像処理を楽しめるようサポートしてくれます。
主な仕様
Vespera IIの主な仕様は以下の通りです。
- 口径: 50mm
- 焦点距離: 250mm
- 口径比: 1:5 (F/5)
- レンズ: クアドラプレット、アポクロマート、フィールドフラットナー付き
- 画角(通常): 2.5×1.4°
- 画角(ライブモザイク): 最大4.3×2.4°または3.25×3.25°
- イメージセンサー: SONY IMX 585(カラー)
- センサー画素数: 3840×2160(8.3メガピクセル)
- モザイクモード画素数: 最大24メガピクセル
- センサーサイズ: 11.2×6.3mm
- ピクセルサイズ: 2.9μm
- 角分解能: 2.390秒角
- 限界等級: 16
- バッテリー動作時間: 4時間(内蔵)
- ストレージ: 25GB
- コネクター: USB Type-C
- 画像フォーマット: Jpeg、FITS、TIFF(16bits RAW画像)
- 寸法: 48×20×9cm
- 質量: 5kg
- 動作温度範囲: 0~40℃
三脚について
Vespera II用カーボン三脚は別売りとなっています。
Vespera IIの操作方法
Vespera IIの主な操作は、スマートフォンやタブレットにインストールされた「Singularity(シンギュラリティ)」アプリから行います。Vespera IIには電源ボタンが1つしかなく、ほとんどの操作はアプリから行うように設計されています。
操作方法
- 自動初期化:Vespera IIはユーザーの位置に基づいて自動的に向きを調整し、天体の配置を認識します。
- 自動導入・追尾:アプリ内のカタログから目的の天体を選択するか、赤道座標を指定するだけで、Vespera IIが即座にそれを見つけて導入・追尾します。
- ライブオートフォーカス:観測中の気温変化にも対応して常に星を鮮明に捉えることができます。
- ライブ画像強化:不適切な画像を自動的に排除し、良好な画像にのみスタッキング処理を適用することで、リアルタイムで鮮明な画像を表示します。
- ライブモザイク撮影:アプリ上で自由にフレーミングを設定し、最大24メガピクセルの広角画像を撮影できます。
このように、Vespera IIは天文知識や天体望遠鏡の使用経験がなくても、誰もが簡単に最高レベルの天体観測と撮影を楽しめるよう設計されています。
購入できる店舗
Vespera IIは、シュミット Yahooショッピング店やサイトロンジャパン・Vaonis公式サイトで購入できます。

Vespera II(本体)

Vespera伸縮三脚
Vaonis社について
Vaonis社は、スマート天体観測ステーションの開発で知られるフランスのメーカーです。同社は、ディープスカイから届くすべての光子を利用するアルゴリズムを開発し、最新世代のイメージセンサーや高品質な光学系、独自のライブモザイク撮影テクノロジーを組み合わせることで、他に類を見ない画像を実現しています。
購入者のレビューや撮影画像
Xの投稿から
Vespera IIのオリジナル画像です。
Here are the original images off the Vespera II pic.twitter.com/SeoB2Cch7C
— Cath Adams (@CathAdams1973) April 10, 2024
Vaonis Vespera II を使用できることに興奮しています。このスコープの性能には非常に感銘を受けており、画質は素晴らしいです。
My observation summary for March 2024, here’s hoping April is better!
— Cath Adams (@CathAdams1973) April 1, 2024
Frankly it can’t get much worse!
But I’ve been thrilled to be able to use the Vaonis Vespera II. I’m very impressed with the capability of this scope, the image quality is superb.@MoonHourSocial pic.twitter.com/yfij40lmn5
Vespera II で撮影されたオリオン大星雲 M42
Orionnebel M42 aufgenommen mit Vespera II pic.twitter.com/yYKrX8yWU4
— Uwe Petzl (@Leiftryn) March 7, 2024
Vespera IIで撮影したアンドロメダ銀河
— Vaonis Japan (@Vaonis_jp) January 12, 2024
ライブモザイクモード
画角:約3°
画像画素数:18メガピクセル
アンドロメダ銀河全体を画面に収めることができます。Vespera IIとモザイクモードの組み合わせにより、より広い視野をより高い解像度で観測・撮影できます。
詳しくは、https://t.co/nP2Iq8d7ew pic.twitter.com/TuxNOPXtEy
Youtubeのレビュー
まとめ
Vaonis社の新製品「Vespera II」は、自動初期化、自動導入・追尾、ライブオートフォーカス、ライブ画像強化など、先進的な機能を搭載したスマート天体観測ステーションです。
特に、同社の特許技術であるCoval ENSライブモザイク撮影機能は、より広い視野と自由なフレーミングを可能にし、天体観測の新しい可能性を切り開きます。
Vespera IIは、初心者から熟練者まで、誰もが快適に天体観測を行えるよう設計された製品と言えるでしょう。