今回ご紹介するのは、米国サウスダコタ州からの話題です。
公共放送局SDPB(South Dakota Public Broadcasting)によると、バッドランズ国立公園が国際的な光害対策NPOであるDarkSky Internationalから「国際ダークスカイパーク(International Dark Sky Park)」の認定を受けました。
サウスダコタ州としては初めての認定で、長年の取り組みが結実した成果です。本記事ではその背景と、認定が持つ意味についてご紹介します。
州として初、中西部では2例目の認定
サウスダコタ州観光局長のジェームズ・ヘイゲン氏は、今回の認定を州にとっての大きな節目だと位置づけています。広大な自然空間が、今の時代だからこそますます貴重になっている体験を提供しているという趣旨のコメントを寄せています。
バッドランズ国立公園は、全米で国際ダークスカイ認定を受けている約40のNPS(国立公園局)施設のうちの一つであり、中西部の国立公園としては認定2例目という、数の上でも珍しい存在です。
認定に向けた取り組みは何年も前から続けられてきたといいます。
米国でも進む「夜空の消失」
記事の中では、米国全体における光害の広がりを示す数字も紹介されています。
- 米国の国土の約半分が、光害のある夜空の下にある
- 米国人の約80%は、自宅周辺からすでに天の川を見ることができない(米海洋大気庁・NOAAの資料による)
こうした状況の中で、バッドランズのように本来の暗い夜空を保っている場所は、年々希少価値を増しています。
公園レンジャーのリディア・ジョーンズ氏は、天文に関心を持つ来園者は一泊以上滞在する傾向があり、地域経済への貢献度も高いと説明しています。
野生生物にとっての「暗さ」の価値
ジョーンズ氏は、夜間の光害が野生生物にも影響を及ぼすことを強調しています。
渡り鳥は夜間の人工光によって進路を乱されることが知られていますが、バッドランズ国立公園にはそれ以外にも、暗い夜空に依存する生きものが暮らしています。
その代表例が、絶滅危惧種に指定されているクロアシイタチ(black-footed ferret)です。北米大陸でもかつて絶滅したと考えられたほど個体数が減少した夜行性の動物で、暗い環境での活動を前提に進化してきました。
ダークスカイパークとしての認定は、天体観測の環境を守るだけでなく、こうした希少な野生生物の生息環境を保全することにもつながっています。
広がる「天文観光」という経済圏
夜空の暗さは、観光資源としての価値も持っています。記事では、米国でも有数の暗い夜空を誇る「コロラド高原(Colorado Plateau)」地域を例に、国立公園局(NPS)の資料として、天文観光客が今後10年間で約58億ドルを地域に投じると見積もられていることが紹介されています。
星空を目的に訪れる旅行者が長めに滞在し、宿泊・飲食・ガイドツアーなどにお金を使う傾向があることは、日本の「星空観光」を推進する地域にとっても参考になる視点です。
暗い夜空を守ることは、単なる環境保全にとどまらず、地域経済を支える資産を守ることでもあるといえます。
補足:日本のダークスカイ認定地
DarkSky Internationalの認定は米国内だけの話ではありません。
日本国内でも、沖縄県の西表石垣国立公園が「国際ダークスカイパーク」の認定を受けており、アジアを代表する星空保護エリアの一つとなっています。
バッドランズのように「野生生物の保護」と「観光振興」を両立させる視点は、国内の認定地や、今後認定を目指す地域にとっても重要な指針になりそうです。
まとめ
バッドランズ国立公園のダークスカイパーク認定は、米国内でも夜空の保護がますます希少で価値のある取り組みになっていることを示す出来事です。
絶滅危惧種の保護、地域経済への貢献、そして純粋に星空を楽しむ体験価値——これらが一体となって初めて実現する認定だといえるでしょう。