Image Credit: ESO/P. Horalek, M. Wallner (CC BY 4.0)
ミシガン州ピトスキー市、DarkSky公認の屋外照明規制を導入
人口1万人に満たない小さな街が、全米で初めての一歩を踏み出しました。
米ミシガン州ピトスキー市が、国際的な光害対策団体「ダークスカイ・インターナショナル」の認証を受けた屋外照明条例を可決し、全米で初めて「DarkSky公認条例」を持つ都市となったのです。
大都市でも国立公園でもない、五大湖沿いの小さな観光の街がなぜ先陣を切ったのでしょうか。
本記事は、米メディアBridge Michiganの報道をもとに、その条例の中身と背景をご紹介します。
全米で初めて:「DarkSky公認条例」とは
今回ピトスキー市が可決した条例は、光害対策の国際団体「ダークスカイ・インターナショナル(DarkSky International)」と連携して策定された、屋外照明に関する規制です。
全米の自治体の中で、同団体の公認を受けた形でこうした条例を制定したのはピトスキー市が初めてとされています。
これまで光害対策は、国立公園や星空保護区といった「特別な自然エリア」を対象に語られることが多く、一般的な市街地の街づくりの一部として法制化される例は、米国内でもまだ珍しいものでした。
今回の条例は、光害対策を都市計画の標準的な一部に組み込んだ点で、先例的な意味を持っています。全米の自治体が今後、同様の枠組みを参照する際のひな型になる可能性もあります。
具体的な規制内容:11時消灯とシェード義務
条例の柱となるのは、大きく分けて3つの具体的なルールです。
- 新規開発物件の照明は夜11時までに自動消灯すること
- 光が上方や周囲に漏れないよう、照明器具に下向きのシェード(遮光板)を取り付けること
- 明るさや色温度(光の色合いを示す指標で、数値が低いほど暖色系になる)についての基準を満たすこと
これらはいずれも、ダークスカイ・インターナショナルが推奨してきた基本的な光害対策の考え方に沿ったもので、特別な技術を必要としない、比較的導入しやすい対策と言えます。
なぜピトスキーは動いたのか – 星空を守りたいという思い
市の都市計画担当者ジョン・ラコアンジェリ氏は、条例の狙いについて「時間をかけて、地域住民が外に出て空を見上げれば、光害に邪魔されずに星を見られるようにしたい」と述べています。
この背景には、ミシガン州がすでに星空保護の実績を積み重ねてきた土地であるという事情があります。
同州には現在10か所の保護された星空エリアがあり、うち3か所は北西部に集中、2024年にはビーバー島州立野生生物研究区域も新たに加わりました。
ピトスキー市はこの北西部エリアに位置しており、地域全体で星空を守る機運が高まっていたことが、条例制定の追い風になったとみられます。
観光業にとっても、澄んだ星空は他地域との差別化要素になり得るという計算もありそうです。
変化は数年がかり – 既存建物への現実的な移行措置
ただし、この条例がすぐに街の夜空を劇的に変えるわけではありません。
既存の建物は現行の照明基準のまま「グランドファザー条項」(既存不適格として当面の規制対象から除外される仕組み)で猶予されており、大規模な改修を行う際にはじめて新基準への適合が求められます。
市のシティマネージャーシェーン・ホーン氏は「照明が入れ替わっていくにつれて効果が出てくるが、目に見える変化が現れるまでには数年かかるだろう」と率直に見通しを語っています。
理想を追い求めて既存住民や事業者に急激な負担を強いるのではなく、新規開発から着実に基準を広げていくという現実的な選択をした点は、他の自治体が同様の条例を検討する際の参考になりそうです。
拙速な規制強化よりも、長く定着する仕組みづくりを優先した判断と言えるでしょう。
全米へ波及する可能性 – 他都市への影響
ダークスカイ・インターナショナルの政策アドバイザーリック・アッティング氏は、適切な屋外照明が「屋外で過ごす住民の健康と福祉を守る」ことにもつながると強調しています。
光害対策は星空観賞のためだけでなく、防犯上必要とされる明るさを保ちながら、無駄な光を減らすという住民生活に直結するテーマでもあるのです。
今回のピトスキー市の事例が全米のニュースとして報じられたことで、他の自治体が同様の条例整備を検討するきっかけになる可能性は十分にあります。
ミシガン州内には現在、正式な「星空保護区コミュニティ」の認定を受けた都市はまだ存在しませんが、ピトスキー市の条例がその最初の一歩になるかもしれません。
ミシガン州は隠れた星空観光地
ミシガン州は五大湖に囲まれた土地柄、都市部を離れれば湖畔や森林地帯に本格的な星空保護区が点在しています。
2024年に新たに加わったビーバー島州立野生生物研究区域を含め、州内には10か所の保護エリアがあり、その数は米国内でも上位に入ります。
中西部というと農業や工業のイメージが強いかもしれませんが、実は隠れた星空観光のポテンシャルを持つ地域なのです。
ピトスキー市のような小さな街の取り組みが積み重なることで、地域全体のブランド力向上にもつながるかもしれません。
まとめ
人口1万人に満たない小さな街の条例は、それ自体が夜空を劇的に変えるものではありません。
しかし「国際団体の公認を受けた屋外照明条例」という形を全米で初めて実現したことは、他の自治体が追随するための具体的なモデルケースを示した点で大きな意味を持ちます。
光害対策は、大都市や有名な国立公園だけの話ではなく、身近な街づくりのルールとしても着実に広がりつつあるのです。
出典: Bridge Michigan「In US first, Petoskey passes rules to crack down on light pollution」(https://bridgemi.com/outdoors-life/petoskey-cracks-down-on-light-pollution-in-bid-to-become-dark-sky-city/) をもとに作成。