Image Credit: NPS / Gin Majka
メイン州が9月30日施行、色温度・シールドまで細かく規定
以前の記事では、ミシガン州ピトスキー市という一つの街が全米初の光害条例を可決した事例をご紹介しました。今回はさらにスケールの大きな動きです。米メイン州が、全米で初めて州レベルの光害規制法を制定し、2026年9月30日に施行されることになりました。
本記事は、公共ラジオ局Maine Publicの報道をもとに、その内容をご紹介します。
全米初:州レベルの光害法「LD 1934」とは
メイン州で成立したのは、「LD 1934(責任ある屋外照明を推進する法律)」と呼ばれる法案です。提案したのは、オロノ選出の州議会議員ローリー・オシャー氏(民主党)。
法律が適用されるのは、街灯や学校、町役場の照明など、税金で賄われる公共の屋外照明に限定されており、個人宅や民間企業の照明までは対象になっていません。それでも、州全体で統一基準を設けるという枠組みは全米でも例がなく、都市単位の条例とは一線を画す取り組みとして注目されています。
細かすぎる基準:色温度からシールドまで
この法律の特徴は、原則論にとどまらず非常に細かい数値基準を定めている点です。米国照明学会(Illuminating Engineering Society)の基準に準拠する形で、通常の屋外照明は色温度3,000ケルビン以下に制限されます。
また、1,000ルーメン以上の明るい照明器具には完全遮光型の器具が義務付けられ、光の総出力のうちごくわずかな割合(器具の真上80度以上の方向には最大5%まで)しか漏れないようにする必要があります。行政が管理する何気ない街灯一つひとつに、これほど詳細な技術基準が課されるのは異例と言えるでしょう。
スポーツ照明にも個別の基準
興味深いのは、スポーツ照明に対して個別の基準が設けられている点です。ナイター設備のような強力な照明については、色温度の上限が5,700ケルビンまで緩和される一方、光の85%を照射範囲の半径10メートル以内に集中させることが求められ、一部の競技では真上80度以上への漏れを8%以下に抑えることが義務づけられました。
競技によって必要な明るさや照射範囲が異なる実情を踏まえつつ、無駄な光の拡散だけは徹底的に抑えるという、きめ細かい設計思想がうかがえます。
0.1ルクスの光害侵入規制と消灯時間
自然保護の観点からは、「0.1ルクス」という光害侵入の上限値が設定されました。これは、連邦や州が指定するウィルダネス(原生自然保護区域)に対して、この基準を超える光が漏れ出すことを禁じるものです。
さらに、緊急性のない公共照明については、指定された夜間の時間帯に消灯することも義務付けられています。単に照明の性能を規定するだけでなく、「そもそも必要のない時間は消す」という発想を法律に組み込んでいる点は、光害対策の基本に忠実な設計と言えるでしょう。
公共照明限定だが、民間への波及に期待
法案を提出したオシャー議員は、この法律が公共照明のみを対象としている点について、「個人で光害を減らしたいと考えている住民にとっても、一つの指針になるはずだ」と述べています。
以前ご紹介したミシガン州ピトスキー市の条例が一つの街から始まった取り組みだったのに対し、今回のメイン州法は、州全体の公共インフラという広い範囲に網をかけた点で、より大きなインパクトを持つ可能性があります。民間の建物や照明にまで規制が及んでいない現状はありますが、州が主導して具体的な数値基準を示したこと自体が、今後他州や民間事業者が独自に基準を検討する際の重要な参照点になりそうです。
メイン州は東海岸屈指の星空の宝庫
メイン州には、東部で最も暗い夜空を持つとされるカターディン・ウッズ・アンド・ウォーターズ国定記念物があり、国際ダークスカイ・インターナショナルから「ダークスカイ・サンクチュアリ」の認定を受けています。ミシシッピ川以東で最も暗い夜空とも言われ、光害マップの指標であるボートルスケール(数値が低いほど暗い)でも最高クラスの「2」を記録しています。
今回の州法は、こうした貴重な星空資産を持つ州だからこそ生まれた取り組みとも言えそうです。
まとめ
メイン州の新しい光害法は、対象が公共照明に限定されているとはいえ、州全体で統一的な数値基準を定めた全米初の試みです。都市単位の条例から州単位の法律へと、光害対策の枠組みは着実に広がりを見せています。
ローカルな取り組みが積み重なり、いずれ全米レベルの基準へとつながっていくのか、今後の動向にも注目したいところです。
出典: Maine Public「Maine’s first law to battle light pollution goes into effect this year」(https://www.mainepublic.org/environment-and-outdoors/2026-01-12/maines-first-state-law-to-regulate-light-pollution-and-protect-dark-skies-goes-into-effect-this-year)をもとに作成。