Photo by Iain Whyte, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons
オーストラリア・ノーザンテリトリー(北部準州)にある先住民の聖地「カルルカルル(Karlu Karlu)」が、国際的な光害(こうがい、人工照明による夜空の明るさの増加やその悪影響)対策NPOであるDarkSky Internationalから、「国際ダークスカイ・サンクチュアリ(International Dark Sky Sanctuary)」に正式認定されたと、Guardian紙が報じました。この称号を得た場所は世界でもわずか24カ所しかなく、オーストラリア国内では3カ所目、ノーザンテリトリーでは初めての快挙です。本記事では、認定の背景と、そこに込められた地域・先住民コミュニティの想いを紹介します。
カルルカルルとは — 先住民の聖地に広がる太古の奇岩群
カルルカルル保護区(通称「デビルズ・マーブルズ(Devils Marbles)」)は、ノーザンテリトリーの町テナントクリークから南へ約100kmの場所に位置し、太古の花崗岩でできた巨大な丸い奇岩群で知られています。
保護区の総面積1,800ヘクタールのほぼ全域が、カイテティ族、ワルムング族、ワルピリ族、アリャワラ族という先住民(アボリジニ)の伝統的な土地所有者にとって重要な聖地とされています。今回の認定に向けた申請は、ノーザンテリトリー観光・接客局が中心となり、これら伝統的土地所有者や地元自治体の協力のもとで進められました。
世界にわずか24カ所 — 「ダークスカイ・サンクチュアリ」の希少性
国際ダークスカイ・サンクチュアリとは、DarkSky Internationalが定める夜空保護の認定制度の中でも特に選ばれた場所に与えられる称号です。人工の光がほとんど届かない、極めて澄んだ夜空を持つ、人里離れた自然環境が対象となります。科学的・環境的・教育的・文化的ないずれかの観点で重要性が認められることも条件です。
この認定を得るのは非常に難しく、世界中でも認定地はわずか24カ所しかありません。オーストラリア国内では、カルルカルルの前に以下の2カ所が認定を受けています。
- アーカルーラ・ウィルダネス・サンクチュアリ(南オーストラリア州フリンダース山脈、2023年認定)
- オーストラリア恐竜時代博物館(クイーンズランド州、通称「ジャンプアップ」メサ上に位置、2019年認定)
カルルカルルは、これに続くオーストラリア3例目、そしてノーザンテリトリーでは初の認定地となりました。
認定までの道のり — 半年に及ぶ夜空観測と入念な審査
今回の認定に至るまでには、ノーザンテリトリー公園野生生物局(NT Parks and Wildlife)が主導する1年がかりの入念なプロセスがありました。具体的には、夜空の暗さのレベルを測定するための半年間にわたる夜空観測データの収集、既存の人工照明の見直し、そして将来夜空の暗さを損なうリスクとなりうる要因の評価などが行われました。
ノーザンテリトリー公園野生生物局運用部門のシニアディレクター、フィリップ・カワン氏はGuardian紙の取材に対し、今回の認定について次のように語っています。
「この認定は、夜空を守り、その価値を伝えていくという私たちのコミットメントを示すものです。今後のいかなる開発計画においても、光害への配慮が求められることになります。」
また、カワン氏は次のようにも述べています。
「カルルカルルは、世界でも屈指の暗い夜空を持つ場所のひとつです。光害に一切妨げられることなく天の川や星座を眺めることができ、この体験を訪れる方々と分かち合えることを、私たちはとても嬉しく思っています。」
期待される効果 — 観光・保全・地域社会への恩恵
今回の認定がもたらす効果は、単に「星がきれいに見える」ことにとどまりません。カワン氏は、夜空を光害から守ることは野生動物の保護にもつながり、さらに人間の健康にとっても良い影響があると指摘しています(夜間の強い人工光が生物の概日リズム(体内時計、光の周期に合わせて体の様々な機能を調整する仕組み)を乱すことは、これまでも世界各地で問題視されてきました)。
観光面での期待も大きいものです。ノーザンテリトリー観光・イベント局のCEO、スザーナ・ビショップ氏は、今回の認定を次のように評価しています。
- 「訪問客経済と、この特別な場所の将来的な保全の両方にとって、素晴らしいニュースです」
- 「国際的な認知度の向上により、この地域が世界地図に載ることになります。曇りのない満天の星空での体験を求める旅行者に向けた、新たな魅力の一つが加わりました」
補足:国際ダークスカイ・サンクチュアリとは
国際ダークスカイ・サンクチュアリの認定制度を運営するDarkSky International(旧IDA、International Dark-Sky Association)は、1988年に設立されたアメリカの国際NPOです。「サンクチュアリ」はDarkSky Internationalが定める複数の認定区分の中でも、地球上でとりわけ人里離れた、際立って暗い夜空を持つ場所にのみ与えられる、最も希少性の高い称号のひとつとされています。前述の通り世界に24カ所しかなく、2024年にはスコットランドのラム島(Isle of Rum)がスコットランド初のサンクチュアリとして認定されたばかりです。
先住民の聖地であるカルルカルルが国際的な夜空保護の称号を得たことは、伝統的な土地への敬意と、現代の光害対策という2つの価値観が結びついた象徴的な出来事といえます。世界にわずか24カ所という希少な「暗い夜空」の一つとして、今後どのような形で保全と観光の両立が図られていくのか、注目していきたいところです。