電球がもたらす夜の明るさは、私たちの生活を一変させた画期的な発明品です。ですが、今、その明るさが新たな環境問題、すなわち光害として、人間の健康、生物多様性、気候変動、文化遺産に悪影響を与えています。

しかし、一般の人々や環境科学者からは、まだ十分な注意を払われていないのが現状です。

今回は、2024年1月9日に掲載されたBBVA-OpenMindの光害に関する記事を紹介します。

The Growing Threat of Artificial Light – 2024.1.9

この記事では、夜に灯る電気が星空を隠し、私たちの健康や環境にどんな影響を与えているかを解説しています。さらに、野生動物や植物にも悪影響があることや、この問題に取り組む国々の努力についても触れています。光害がどれだけ深刻なのか、そして私たちが行動を起こすべき理由を伝える記事です。

星空を隠す光

ここでは人工光による夜空の明るさ、特に「スカイグロウ」と呼ばれる現象について議論されています。スカイグロウは、人工の光が大気で散乱され、結果的に夜空が不自然に明るくなることを指します。

私たちの多くが、真に暗い夜空を見たことがない、それどころか、ヨーロッパや北アメリカでは99%がこの現象の下に生活しているのです。これについては、都会育ちの若者たちが星空を見たことがないという事実が、ただただ悲しい現実です。

LEDの光、節約の裏の顔

次に、LED街灯の普及で注目されている問題点です。

省エネとされているこの光源ですが、節約したエネルギーを上回る量の照明が使われる「リバウンド効果」があります。これにより、実際のエネルギーの節約や温室効果ガスの削減にはつながらないことが示唆されています。

青い光と睡眠障害

また、青い光は特に夜間に私たちの睡眠に悪影響を及ぼします。アメリカ医師会は、白色LEDが通常の街灯に比べて5倍もの睡眠のサーカディアンリズム(※)への影響を与えると警告しています。夜間に浴びる青い光は身体に「昼間である」とのシグナルを送り、生体リズムを乱す原因となります。

サーカディアンリズム

概日リズムとも呼ばれ、生物が生まれながらにして備わっている約24時間周期のリズムのことです。体温やホルモン分泌など、体の機能がこの約24時間のリズムを示すことが知られています。

野生生物への打撃

光害は人間だけでなく、野生生物にも多大な影響を与えています。夜の明るさによって、獲物を探したり天敵から身を守ったりする動植物の生態に重大な悪影響を及ぼすことが明らかにされています。

光害対策への取り組み

この記事では、最終的には、個人の意識改革からコミュニティの参加、そして政策の変更に至るまで、光害への対策が求められていると結論づけています。

一部の国々は光害を減少させる法律を成立させ、国際的な動きも見られますが、さらなる意識の向上が不可欠です。

終わりに

私たちの当たり前となった夜間の明るさが実は予想以上の副作用を伴っているという危機感を感じます。

市街地の明るさは便利さをもたらす一方で、星空の喪失や動植物への影響、そして人間の健康問題を招いていることが指摘されています。この事実に対する意見や感想はさまざまですが、深刻な問題意識を持つことがまず重要です。

私たちが行うべきことは、ライフスタイルの見直しから始めることです。例えば、夜間の照明を必要最小限に抑えるなど、意識的な選択を心がけることができます。

照明は単に「明るさを提供するツール」ではなく、「環境に影響を及ぼす存在」として再認識する必要があります。照明を使用する際は、必要性、タイミング、強度をよく考え、エコロジカルな製品を選択することも一つの方法です。

今後の展開としては、照明技術のさらなる進化が期待されていますが、それに伴い、エコロジーとのバランスをとる取り組みがより重要になってきます。

自治体や企業レベルでの光害削減のイニシアチブが増え、国際基準が設けられる可能性もあります。また、教育の場で光害に関する教育を取り入れることで、次世代がこの問題に対してより意識的な姿勢を持てるようになることも期待されます。

この問題に取り組むことは、私たちと地球の共存のために不可欠です。だからこそ、今からでも遅くない、私たち一人一人が意識を高め、行動することがゆくゆくは大きな変化へと繋がるはずです。