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ウィスコンシン州住民が騒音と光害で集団訴訟
以前の記事で、テキサス州の住民がAIデータセンターの騒音・光害に困惑する様子をご紹介しましたが、事態はついに法廷闘争へと発展しました。米ウィスコンシン州の住民らが、Microsoftの巨大AIデータセンターを相手取り、集団訴訟を提起したのです。
本記事は、Tom’s HardwareやTechRadarなどの報道をもとにご紹介します。
73億ドルの旗艦施設に住民1,000世帯超が提訴
訴訟の対象となっているのは、Microsoftがウィスコンシン州に建設した総工費73億ドル(約1兆円規模)のAIデータセンター「フェアウォーター」です。「世界で最も強力なAIデータセンター」ともうたわれるこの巨大施設に対し、周辺住民らが2026年7月1日、集団訴訟を提起しました。
訴訟の対象範囲は施設から半径1.5マイル(約2.4km)以内の世帯におよび、その数は1,000世帯超にのぼるとされています。マウント・プレザント地区を中心に、これほど広範囲の住民が原告に名を連ねる訴訟は、データセンターを巡る紛争としては異例の規模と言えるでしょう。
「眠るためにシフトを変えた」深刻な騒音被害
訴状では、ディーゼル発電機や空調設備(チラー、冷却塔、送風機、コンデンサーファンなど)から発生する騒音が「過剰であるだけでなく、常態的かつ執拗である」と主張されています。ある住民は、まともに眠るために勤務シフトを変更せざるを得なかったと訴えています。
Microsoft側が「騒音を吸収・軽減・遮断する適切な音響バリアや遮蔽物を設置していない」との指摘もなされており、対策の不備そのものが争点の一つとなっています。
「星でいっぱいだった夜空が見えなくなった」
光害についても、具体的な証言が示されています。ある住民は「町に向かって車を走らせても、以前は自宅が見えたのに、今は施設の明かりに埋もれて見えなくなった」と述べ、別の住民は「データセンターが来る前は、夜空が暗く星でいっぱいだったが、今ではまぶしい照明のせいでほとんど見えなくなった」と証言しています。
以前の記事で紹介したダークスカイ・インターナショナルの提言や、テキサス州ハンビーの住民の声と、驚くほど似た内容が、今回は正式な訴状の中で語られている点が注目されます。
Microsoftの対応と今後の争点
Microsoft側は自社ブログで、この件について「短期的な緩和策に引き続き取り組むとともに、追加の防音設備を設置し、現場の音を継続的に監視していく」とコメントしています。
ただし、今回の訴訟は騒音・光害に加えて、建設工事に伴う粉じんや大型車両の交通量増加についても問題視しており、Microsoft側の対応がどこまで原告住民の訴えに応えられるかは、今後の裁判の行方次第と言えそうです。AI開発競争の裏側で急拡大するデータセンターが、地域社会との軋轢という形で表面化した象徴的な事例になりつつあります。
基準未順守が「訴訟」に発展するリスク
以前の記事でご紹介した通り、ダークスカイ・インターナショナルはデータセンター向けに、駐車場照度を最大2ルクスに抑える、色温度3000K以下の照明を使う、といった具体的な基準を示していました。
今回のウィスコンシン州の訴訟は、こうした「あるべき基準」が現場で十分に実践されなかった場合、単なる苦情にとどまらず法的な争いにまで発展しうることを示す実例だと言えます。AI開発を支えるインフラ投資が今後も拡大を続ける中、開発事業者にとって、着工前からの地域住民との対話と、業界基準の順守が、これまで以上に重要な経営課題になっていくのではないでしょうか。
まとめ
今回のフェアウォーターは、Microsoftが「世界最大級のAIスーパーコンピューター」と位置づける旗艦施設の一つとされています。AI開発競争の最前線を象徴する施設が、同時に地域住民との紛争の震源地にもなっているという構図は、AIインフラの急拡大が抱える課題を端的に物語っていると言えるでしょう。
テキサス州の住民の声から、ウィスコンシン州の集団訴訟へ——AIデータセンターを巡る光害・騒音問題は、静かな懸念から具体的な法的紛争へと段階を進めつつあります。業界団体が示す理想的な基準と、現場で実際に暮らす住民の生活との間のギャップをどう埋めていくかは、AI時代のインフラ開発における避けて通れない課題になっています。
出典: Tom’s Hardware「Wisconsin residents file class-action lawsuit against Microsoft’s ‘world’s most powerful AI data center’」ほかの報道をもとに作成。