
今回は”The Portugal News”に掲載された光害に関するニュースをご紹介します。
https://www.theportugalnews.com/news/2025-05-04/lisbon-light-pollution/97351
ポルトガルの首都リスボンで、光害(こうがい/light pollution)の問題が注目を集めています。
近年、都市の過剰な人工照明が住民の生活や環境に与える影響が深刻化し、市民や環境団体が対策を求めて声を上げています。
特に緑の党(Os Verdes・オス・ヴェルデス)は、市議会に対して光害削減の進捗状況や今後の対策について正式に要請しました。
この記事では、リスボンの光害問題の現状、政策の動き、住民やSNS上での反応、そして今後の展望について詳しく解説します。
光害とは何か?都市に与える影響
光害とは、夜間に過剰な人工照明が空や周辺環境に漏れ出し、自然な夜の暗さを損なう現象です。
リスボンでは、特にGare do Oriente駅近くの建物で、1年間にわたり6台のスポットライトが24時間点灯し続け、住民に大きな不快感を与えていると報告されています。
光害は単なる「まぶしさ」だけでなく、以下のような多面的な影響をもたらします。
- 住民の睡眠障害や健康被害
- 生態系への悪影響(昆虫や鳥類の行動異常、植物の成長阻害など)
- 不必要なエネルギー消費によるCO2排出増加
欧州連合(EU)では、光害を「新たな環境汚染」と位置付け、各国で法規制や技術基準の整備が進められています。
リスボンでも2022年に光害削減の勧告が市議会で承認されましたが、住民からは「現場の改善が進んでいない」との声が上がっています。
リスボン市の政策と緑の党の要請
緑の党は、市議会に対し「2022年4月の光害削減勧告以降、どのような対策が実施されたのか」を正式に照会しました。
また、光害の影響調査や、住民への啓発キャンペーンの実施についても質問しています。
リスボン市は、主要交通拠点であるオリエンテ駅の照明をLEDに全面更新し、40%以上のエネルギー削減とCO2排出削減を実現しました。
しかし、駅周辺の個別建物の過剰照明には十分な対応がなされていないとの指摘もあります。
EU全体では「欧州光害マニフェスト」が採択され、人工光の環境モニタリングや削減目標の設定が推進されています。
リスボンもこうした欧州の流れに沿って、より具体的な規制や市民参加型の施策が求められています。
市民とSNS上の反応 – 夜の静けさを求めて
光害問題は、SNSやインターネット上でも活発に議論されています。
X(旧Twitter)では、「夜でも建物が昼間のように明るい」「眠れない」「子どもが怖がっている」といった住民の切実な声が投稿されています。
一方で、「防犯のためにはある程度の照明は必要」「都市の景観としてライトアップは魅力的」といった意見も見られ、バランスの取れた議論が求められています。
ヨーロッパ各都市では、住民参加型の「夜の暗さを守るイベント」や、照明の自動調整システム導入など、実効性のある取り組みが進んでいます。
リスボンでも、住民の声を反映した政策設計と、啓発活動の強化が今後の課題です。
光害対策の最新動向と今後の展望
EUでは、光害対策として以下のような施策が推奨されています。
- 必要最小限の照明(ALARA原則:合理的に達成できる限り低く)
- LED照明の導入と色温度の管理(青色光の抑制)
- 上方・水平方向への光漏れ防止設計
- 公共照明の自動調光・間引き運転
リスボン市も、駅や公共施設のLED化を進める一方で、個別建物や商業施設の照明規制、住民向けの啓発活動など、総合的な対策が求められます。
光害は都市の「見えない公害」とも言われますが、エネルギー効率やCO2削減、健康増進、観光資源(星空)の保全など、多くのメリットが期待できます。
世界の光害対策とリスボンの可能性
世界の先進事例とリスボンへの示唆
- ベルギーやエストニアでは、都市照明の自動制御や住民参加型の照明計画が進行中です。
- スペインでは「夜の暗闇を守る日」など啓発イベントが定着し、住民の意識向上に寄与しています。
- リスボンでは、グリーンインフラ(都市の緑地拡大)と連携した光害対策も検討されており、都市の持続可能性向上に寄与する可能性があります。
まとめ
リスボンの光害問題は、市民の健康・環境・エネルギー効率など多方面に影響を及ぼす重要な課題です。
グリーン党や住民の声を受け、市議会や行政はより具体的な対策と情報発信が求められています。
都市の夜空を取り戻し、持続可能な都市環境を実現するために、私たち一人ひとりが光害について考え、行動することが大切です。