
沖縄本島最北端、豊かな森と海に囲まれた国頭村(くにがみそん)が、2025年3月28日、世界的な星空保護団体「ダークスカイ・インターナショナル」へ星空保護区(ダークスカイ・パーク)の申請を行いました。
星空の美しさ「保護区」に 沖縄・国頭村が申請 村内4カ所を結び「やんばるダークスカイ・フォレスト」 https://t.co/YWGJaUYiXC
— 沖縄タイムス (@theokinawatimes) April 10, 2025
村内4カ所を結ぶ「やんばるダークスカイ・フォレスト」は、光害(ひかりがい)対策や野生動物の生息環境保全を徹底し、星空観光(アストロツーリズム)を新たな地域資源として活用する先進的な取り組みです。
本記事では、星空保護区の意義や申請エリアの特徴、観光と自然保全の両立、そして今後の展望について詳しく解説します。
星空保護区とは?その意義と世界的潮流
星空保護区(ダークスカイプレイス)は、国際的な民間団体「ダークスカイ・インターナショナル(darksky)」が夜空の暗さや光害対策の徹底度など厳格な基準を満たす地域を認定する制度です。
2023年時点で世界201カ所、日本国内では西表石垣国立公園、東京都神津島、岡山県美星町、福井県大野市の4カ所が認定されています。
この制度の目的は、
- 不要な人工照明による光害(ひかりがい)を抑制し、夜空本来の美しさを守ること
- 天体観測や星空観光(アストロツーリズム)の推進
- 夜行性生物をはじめとする生態系の保全
- 地域住民や観光客への環境教育や啓発
にあります。
特に沖縄のような自然豊かな地域では、星空の美しさが観光資源となるだけでなく、世界自然遺産の森や希少な動植物の生息環境とも密接に関わっています。
星空保護区の認定は、地域のブランド力向上や持続可能な観光の実現に直結する重要な取り組みといえるでしょう。
「やんばるダークスカイ・フォレスト」申請エリアの特徴
国頭村が申請した星空保護区「やんばるダークスカイ・フォレスト」は、村内4カ所の観光・自然施設を結ぶ広域エリアです。
- 国頭村森林公園
- やんばる学びの森
- 奥やんばるの里
- 安田くいなふれあい公園
これらの施設は、いずれもやんばるの森の豊かな自然に囲まれ、夜空の暗さが保たれていることが調査で確認されています。
国頭村は2022年から光害対策を本格化し、4施設に設置された約300基の照明を光害防止型に改修。
生活に必要な明かりは確保しつつ、星空観察に最適な暗さを維持しています。
また、国頭村は北緯26度、東経128度に位置し、全天88星座のうち82星座が観測可能。
ヤンバルクイナやリュウキュウコノハズクなどの希少な夜行性動物の生息地でもあり、星空観望とともに自然のBGMとして動物たちの鳴き声を楽しめるのも大きな魅力です。
光害対策と生態系保全の取り組み
光害(ひかりがい)とは、過剰または不適切な照明によって夜空が明るくなり、星が見えにくくなる現象を指します。
これにより、天体観測の妨げとなるだけでなく、野生動物の行動や生態系バランスにも悪影響を及ぼします。
国頭村では、
- 屋外照明の全数調査と光害防止型への改修(約300基)
- 村全体での光害対策の啓発活動
- 夜行性動物の生息環境調査と保全活動
などを推進。星空の美しさと生態系保全を両立させるため、住民・事業者・行政が一体となって取り組んでいます。
このような対策は、単に「暗くする」ことではありません。
防犯や安全に配慮しつつ、必要最小限の明かりで生活や観光を支える「スマートライティング」が重要視されています。
アストロツーリズムと地域活性化の可能性
星空観光(アストロツーリズム)は、近年世界的に注目されている新しい観光スタイルです。
国頭村は「やんばるダークスカイ・フォレスト」を拠点に、
- 星空観察イベントやガイドツアー
- 宿泊型のナイトスカイ体験プログラム
- 星空と森・動物をテーマにしたエコツアー
など、滞在型観光の充実を目指しています。
星空保護区の認定によって、国内外からの観光客誘致や地域経済の活性化が期待されます。
特に、リピーターや自然志向の旅行者にとっては「ここでしか味わえない」体験価値が大きな魅力となるでしょう。
また、星空観光は地域住民にとっても自分たちの自然や文化への誇りを育む機会となり、次世代への継承や環境教育の場としても重要な役割を果たします。
今後の展望と課題
星空保護区の認定審査には平均4カ月ほどかかる見込みで、2025年内の認可が期待されています。
認定されれば、沖縄本島初、県内でも西表石垣国立公園に続く2例目の快挙となります。
今後の課題としては、
- 光害対策のさらなる徹底と継続
- 住民・観光客への啓発活動の強化
- 環境保全と観光のバランス維持
- 地域全体での持続可能な運営体制の構築
などが挙げられます。
元石垣島天文台所長の宮地さんは「森を生かし、星空を守るための工夫をし続けてきた。認定されれば国頭村の星空の美しさが国際的に保証され、さらなる観光拠点になる」と期待を寄せています。
(https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1561700より引用)
星空保護区の認定基準と国内外の動向
- 星空保護区(ダークスカイプレイス)は、5つのカテゴリー(パーク、リザーブ、サンクチュアリ、コミュニティ、デベロップメント)があり、国頭村が申請した「ダークスカイパーク」は自然環境と観察拠点の両立が求められる最も一般的なタイプです。
- 世界ではアメリカやヨーロッパを中心に200カ所以上、日本では西表石垣国立公園(2018年認定)、神津島(2020年)、美星町(2021年)、大野市(2023年)が認定済み。沖縄本島での認定は初となります。
- 星空保護区の認定は、観光だけでなく、地域社会の環境意識向上や持続可能な開発目標(SDGs)達成にも貢献します。
まとめ
沖縄・国頭村の「やんばるダークスカイ・フォレスト」星空保護区申請は、アストロツーリズム推進と生態系保全を両立させる先進的な試みです。
光害対策や夜行性動物の保護、星空観光の充実など、多角的な取り組みが地域の未来を切り拓いています。
今後の認定結果とさらなる発展に注目し、ぜひ一度国頭村の満天の星空を体験してみてください。