
私たちの夜空が年々明るくなっています。
星空を眺める機会が減少し、自然環境や人間の健康にも悪影響を及ぼしているのです。
しかし、光害対策は難しいものではありません。
今回はMilwaukee Journal Sentinelの記事をご紹介するとともに、家庭でできる簡単な対策をご紹介します。
光害問題の現状

光害とは、人工的な光によって引き起こされる環境問題のことです。
都市化が進むにつれ、過剰な照明が夜空を明るくし、星空の観測を困難にしています。
実に北米の人口の80%が天の川を見ることができなくなったと言われています。
光害は単に星空が見えなくなるだけの問題ではありません。
野生動物の生態系を乱し、人間の睡眠パターンを狂わせ、エネルギーの無駄遣いにもつながります。
DarkSky Internationalによると、これらの影響は広範囲に及んでいます。
家庭でできる5つの光害対策
不要な照明をオフにする
まずは自宅の屋外照明を見直してみましょう。
夜間に人が通らない場所や、重複して照明が当たっている箇所はありませんか?
そういった場所の照明は完全に消してしまうのが一番の対策です。
タイマーやディマースイッチを活用する
完全に消すことができない照明でも、タイマーや人感センサー、調光器を使うことで、使用時間や明るさをコントロールできます。
例えば、玄関灯を夜中は消灯し、早朝のみ点灯するようにタイマー設定するなどの工夫ができます。
必要な場所だけを照らす
階段や通路、玄関など、安全のために照明が必要な場所はあります。
しかし、それ以外の場所まで明るく照らす必要はありません。
光を地面に向け、シールドつきの照明器具を使用することで、必要な場所だけを効率的に照らすことができます。
低輝度で暖色系の照明を選ぶ

照明を選ぶ際は、ケルビン値に注目しましょう。
3000K以下の暖色系の光は、青色光の放出が少なく、光害の軽減に効果的です。
DarkSky Internationalは、家庭用照明には2700K以下のものを推奨しています。
周囲の人々と話し合う
自宅の照明を見直すだけでなく、近隣の人々とも光害について話し合うことが重要です。
地域全体で取り組むことで、より大きな効果が期待できます。
中には、夜間照明に関する条例を制定したり、独自のダークスカイ保護グループを立ち上げる地域もあります。
光害対策の重要性
光害対策は、単に星空を取り戻すだけの問題ではありません。
生態系の保護、人間の健康維持、エネルギー効率の向上など、多岐にわたる効果があります。
生態系への影響
過剰な人工光は、野生動物の行動パターンを乱します。
特に夜行性の動物や渡り鳥への影響は深刻です。
例えば、海亀の子どもたちは、孵化後に月明かりを頼りに海へ向かいますが、人工光に惑わされて方向を見失うことがあります。
人間の健康への影響
人工光、特に青色光は、人間の体内時計を狂わせ、メラトニンの分泌を抑制します。
これにより、睡眠障害やそれに伴う様々な健康問題を引き起こす可能性があります。
エネルギー効率
不必要な照明は、エネルギーの無駄遣いにつながります。
光害対策は、同時に省エネ対策にもなるのです。
国際ダークスカイ協会の推計によると、米国だけで毎年30億ドル相当の電力が、不適切な屋外照明によって無駄に消費されているそうです。
光害対策の未来
光害対策は、個人レベルの取り組みから始まり、地域全体、さらには国レベルの政策へと発展していく可能性があります。
例えば、フランスでは2018年に光害防止法が施行され、屋外照明の使用制限が義務付けられました。
日本でも、環境省が2021年に「光害対策ガイドライン」を改訂し、LEDの普及に伴う新たな課題に対応しています。
今後、より多くの国や地域で同様の取り組みが広がることが期待されます。
まとめ
光害対策は、私たち一人一人ができる身近な環境保護活動です。
不要な照明を消す、適切な照明器具を選ぶなど、小さな行動の積み重ねが大きな変化をもたらします。
星空を取り戻すことは、単に美しい景色を楽しむだけでなく、生態系の保護や人間の健康維持にもつながる重要な取り組みです。
今日から、自宅の照明を見直してみませんか?
そして、家族や友人、近隣の人々とこの問題について話し合ってみてください。
私たち一人一人の行動が、より暗く、より美しい夜空を取り戻す第一歩となるのです。