今回は、ThinkLandscapeが光害の深刻化と、その影響について取り上げた記事について紹介します。

私たちは光を愛し、暗闇を恐れる生き物です。

しかし、砂糖やスマホを見ている時間と同様に、光の過剰使用は私たち自身と、他の生物に害を及ぼします。

この記事では、光公害がもたらす様々な影響と、夜空を守る取り組みについて詳しく解説されています。

光に囲まれた現代社会

記事によると、世界人口の80%が光害のある場所に住んでいます。

その結果、3人に1人が住む場所から天の川を見ることができなくなっているのです。

さらに、2011年から2022年にかけて、夜空の明るさは年率9.6%の割合で増加しており、実質的に8年ごとに2倍になっているそうです。

光害とは、人的活動により発生する過剰または誤って配置された人工光のことを指します。主な種類としては、以下のようなものがあります。

  • 空気光(スカイグロー)…住宅地上空の夜空が明るくなること
  • 眩しさ(グレア)…視覚的な不快感や視力障害を引き起こす過剰な明るさ
  • 光漏れ(ライトトレスパス)…本来の照明対象を超えて、隣接地や自然環境に入り込む光
  • 煩雑性(クラッター)…必要以上の明るさや、照明の方向が適切でない光源の過剰

光害がもたらす影響

この過剰な光は、私たちの体内リズム(概日リズム)を乱します。

睡眠ホルモンであるメラトニンの産生を低下させ、睡眠障害、記憶力低下、肥満、がんリスク増加などの健康影響があるのです。

特に、スマートフォンやLEDなどから発せられる青色光は、メラトニン分泌に大きな影響を及ぼします。

光害が生物多様性に与える影響も深刻です。

夜行性の動物は月や星の光で方向を定めていますが、光による混乱から本来の行動ができなくなっています。

亀の子供が街路灯の明かりを月だと勘違いして海ではなく陸に向かうケースや、サケの稚魚が生まれる時期がずれて捕食されやすくなるなど、様々な例が報告されています。

さらに、昆虫が光に惹かれて命を落とし、その昆虫を食べる動物たちも同じ運命をたどります。

ホタルの交尾率が下がり、個体数減少の一因になっていることも分かっています。

植物にも影響があり、落葉樹の紅葉や芽吹きの時期がずれるなどの弊害が出ています。

夜空を守る取り組み

こうした問題への対策として、1980年代からダークスカイ(旧:国際ダークスカイ協会)が中心となり、夜空の保護活動が広がってきました。現在、22カ国で16万平方kmを超える「国際ダークスカイ保護区」が設置されています。

2020年には、ニウエ島が世界初の「ダークスカイネーション」に指定されました。国を挙げて光量の測定や、街路灯の橙色LED化を進めています。

これは在来種であるコウモリやヤシガニの生態保護を目的としたものですが、一方で経済発展の機会を奪うことのないよう配慮も重要だと指摘されています。

照明と安全性のジレンマ

一方で、都市部の安全性と照明レベルの関係については、一般に思われているほど単純ではありません。

2019年のメルボルン調査では、とても明るい場所は逆に不安全と感じられがちで、眩しさで人の動きが見えにくかったり、濃い影ができて見通しが悪かったりするためだと分析されています。

都市における適正照明のあり方

この問題に対し、専門家は以下の5つの施策を提案しています。

  • これまで暗かった場所への照明設置を避ける
  • 必要最低限の明るさに抑える
  • 必要な場所にのみ設置し、可能な限りカバーをする
  • 温かみのある橙色系の光を使う
  • 無駄な光を空に向けないよう配置を工夫する

このように、都市部の照明は単に明るさを上げるのではなく、きめ細やかな配置と、自然との調和を図ることが大切なのです。

補足情報

光公害問題に取り組む国内の団体として、ダークスカイ・ジャパン(旧・国際ダークスカイ協会 東京支部 (IDA東京))があります。同会では、野外の人工光源の実態調査や、環境に配慮した照明技術の研究開発を行っています。一方、国は2020年に「光環境の保全に関する基本方針」を定め、自治体による夜間照明環境への対策を求めています。

まとめ

かつて、人類は星空から多くのことを学び、そこに宇宙との繋がりを感じていました。

しかし現代では、その絆が失われつつあります。しかしそれは、私たち自身の健康や、地球上の多様な生命に深刻な影響を及ぼしています。

夜の大切さを取り戻すため、一人ひとりが光の賢明な使い方について考える必要があるのです。

照明技術の進歩とともに、自然との調和を保つ対策が急がれます。私たち一人ひとりができることから始めましょう。 C