
今回は、中東のメディア「The National」が取り上げた、サウジアラビアの「紅海」地域が世界最大の国際ダークスカイ保護区に指定される見通しについて紹介します。
https://www.thenationalnews.com/travel/2024/05/16/saudi-arabia-red-sea-dark-sky-tourism
はじめに
夜空に輝く無数の星を眺めることができる場所は、都会では光害によりほとんどなくなってしまいました。
サウジアラビアの紅海地域では、この素晴らしい自然の景観を守り、暗夜空間を守るための取り組みが行われています。本記事では、その取り組みの内容と意義について解説します。
星空と人類の関係
アラビア語に由来する星の名前
星空と人類の関係は古くから深いもので、アラビア語から多くの星の名前が由来しています。例えば、エリダヌス座のアケルナルは「川の終わり」、さらにはデネブは「動物の尾」を意味するアラビア語に由来しています。中東では星空に導かれながら旅を続けてきた長い歴史があります。
中東における星空の大切さ
星空は中東で特に重要視されてきました。探検家や巡礼者、商隊は星座を頼りに砂漠を移動してきました。
星空との関わりは時を経ても色あせることがありません。そのため、紅海プロジェクトでは星空の保護に力を入れているのです。
紅海国際ダークスカイ保護区の取り組み
世界第2位の広大な保護区
紅海地域は約28,000平方キロメートルに及ぶ広大な地域で、世界最大のダークスカイ保護区となる見込みです。テキサス州のグレーター・ベンド(38,850平方キロメートル)に次ぐ広さとなります。
光害削減への徹底した取り組み
紅海グローバル社は、照明器具の選定や設置場所、向きなどを徹底的に管理し、光害を最小限に抑えています。
温かみのある低照度の照明を使用し、来訪者が心地よく星空を眺めることができるよう配慮されています。
動物への配慮
光害は海亀や渡り鳥、コウモリなどの動物にも影響を与えます。紅海地域では野生動物への影響を最小限に抑えるため、照明の色や強度に細かな注意が払われています。
地元コミュニティへの啓発活動
紅海グローバル社は、近隣の町アル・ワジュとウムルジュにおいても、老朽化した照明設備の更新や省エネ照明への切り替えを支援しています。地元住民に対しても、星空保護の重要性を啓発する取り組みを行っています。
星空観光の魅力
日常から切り離された非日常体験
都会では見ることのできない満天の星空は、日常から切り離された非日常的な体験を提供してくれます。多くの人は星空に魅了され、精神的な安らぎを得ることでしょう。
光害がない場所の稀少性
世界的に見ると、光害がない真っ暗な場所は極めて少なくなっています。シンガポールでは全土が光害に曝されているほどです。
中東でも、クウェートの98%、カタールの97%、UAEの93%、サウジアラビアでも83%の人が光害下にいます。このようにダークスカイを体験できる場所は貴重なものとなっています。
星空とリゾートの調和
紅海地域では、世界的な高級リゾートホテルチェーンが進出する予定です。
リッツカールトン、セントレジス、シックスセンシスなどの人気ブランドがあります。通常、高級リゾートではあらゆる設備が整っていますが、紅海地域では星空とのバランスが重視されます。
安全性を確保しつつ、できる限り光を遮り、訪れた人に星空の素晴らしさを体験してもらうことが目指されています。
まとめ
サウジアラビアの赤海地域は、世界で2番目に広大な国際ダークスカイ保護区になる見込みです。
星空との関わりの深い中東地域にふさわしい試みです。光害対策は徹底されており、野生動物への配慮もなされています。
一方で、高級リゾートとのバランスも大切にされ、安全面にも配慮しています。
地元コミュニティへの啓発活動も行われるなど、様々な側面から星空を守る取り組みが行われています。
都会の光に囲まれた生活から解放され、星空の下で非日常を味わえる稀有な場所になることでしょう。