このブログ記事は、KUER 90.1の「観光と成長は、ユタ州の認定された暗夜の地域にとって両刃の剣」という記事を基にしています。

アメリカ・ユタ大学が運営するパブリックラジオ放送局です。ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)の創立メンバーで、NPR、BBC、地元のニュースを無料で放送しています。ユタ州全域に広がるトランスレーター網を通じて、FMチャンネル90.1と2つの高精細チャンネルをストリーミング配信しています。非営利の公共放送局として、リスナーの寄付と企業・財団の支援によって運営されています。

星空が美しいユタ州は、国際的に認定された”ダークスカイ(暗夜)”地域が20か所以上あり、世界で最も高い集中度を誇ります。しかし、人口増加と開発の波にさらされ、この貴重な資源を守るのは容易ではありません。

星空保護の試練

スプリングデールは、ザイオン国立公園の近くに位置するユタ州の小さな町です。2009年から光害対策に取り組んできましたが、国際ダークスカイ協会の認定を得るまでには15年もの歳月を要しました。

認定を受けるために、同町は約100万ドル(約1億5000万円)を投じて道路照明を真下に光を遮る型に取り替えました。さらに追加の改修が必要となり、2028年までに自動的に暗くなる照明への更新で、20万ドル以上(3000万円)の出費が見込まれています。小さな自治体にとっては莫大な費用です。

しかし、コミュニティ開発ディレクターのトム・ダンシー氏は「夜空資源の保護のための投資であり、認定取得のための出費とは考えない」と語ります。暗夜は人の健康や野生生物にも恩恵をもたらすと説明しています。

<Xの投稿から>
信じられない光景:ユタ州ザイオン国立公園の夜空に広がる天の川を映した見事なタイムラプス映像が、アメリカ内務省によってFacebookに投稿された。この壮大な映像は、星空を背景にした公園のウォッチマン山のギザギザの峰々を映し出している。

X ABC7 Eyewitness News

スプリングデール付近の光害

光害地図で見たスプリングデールとその周辺です。画像中央がスプリングデールです。町自体は光害の少ない地域ですが、左にはワシントンの街明かりがあります。更に西にはラスベガスの光の塊が見えます。

光害との戦い

他の認定地域も同様の課題に直面しています。スプリングデールはヘルパー、トーリー、キャッスルバレーに次ぐ4番目のダークスカイ認定地域で、モアブも申請中です。しかし開発と観光客の増加による光害の脅威は年々高まっており、公園の年次報告書でも最大の危機視されています。

スプリングデールのダンシー氏は「新しい開発には細心の注意を払う必要がある」と懸念を示します。観光は地域経済を支える一方で、新しいホテルや住宅は光害のリスクを高めるためです。

暗夜の経済効果

しかし、一方で暗夜の地域は世界的に減少する中、ユタ州の認定地域はより貴重で、経済的にも大きな影響力を持つようになっています。

キャピトルリーフ国立公園の近くでホテル経営するジョシュア・ロウリー氏は、その恩恵を実感しています。彼の経営するスカイビューホテルは、屋上から星空が楽しめるよう設計されています。

「多くの人々が星空を観に来ます。滞在時間も長くなり、地域経済にプラスになる」とロウリー氏は語ります。

スペンサー・コックス知事も、2024年4月を「ダークスカイ月間」と宣言し、今後10年で西南部の星空観光が60億ドルの収益を生むと予測しています。

<キャピトルリーフの星空|Xの投稿より>

ジョシュア・ロウリー氏のスカイビューホテル(Skyview Hotel)

この記事でインタビューに答えているホテル経営者のジョシュア・ロウリー氏の「スカイビューホテル」がどんなホテルか気になったので調べてみました。

公式サイト:https://www.skyviewtorrey.com/

公式instagram:https://www.instagram.com/skyviewtorrey/

ユタ州トーリーに位置し、赤い岩壁に囲まれた美しい環境に立地しています。斬新でおしゃれなデザインのホテルです。

14室の客室と6つのグランピングドームがあり、天井がガラス張りのドームからは星空を見ることができます。料金は1泊あたり221ドルから242ドルくらいだということです。

広域連携の重要性

ダンシー氏は、今後の課題として近隣自治体との連携を挙げます。「他地域の光が次第に大きくなり、最終的にはスプリングデールの暗夜を脅かす可能性がある」と危惧しています。

単独の取り組みでは限界があり、広域的な対策が不可欠です。セントジョージ広域圏の光害対策が不十分なままでは、いずれスプリングデールの努力も空しくなるかもしれません。

まとめ

ユタ州の貴重な暗夜空は、観光と開発の波に揺れています。高い認定基準を満たすには、自治体は多額の費用を払わねばなりません。一方で暗夜は地域経済や健康面でも恩恵をもたらします。

保護と利用のバランスを取るのは難しい課題です。今後は近隣自治体が連携し、広域的な視点から対策を講じることが鍵となるでしょう。そうでなければ、いずれユタの美しい星空を次世代に残せなくなる恐れがあります。