
4月21日、約70年周期で太陽系内を周回する”デビルコメット”こと12P/ポン・ブルックス(Pons-Brooks)彗星が、最大の明るさになる予想です。
(ポンズ・ブルックス彗星と、「ズ」を付ける表記もありますが、ここではポン・ブルックスで統一しています。)
この彗星は、時折明るさが増す「アウトバースト」を起こすことで知られており、2023年7月20日には、彗星の周りに角のような形の「コマ」が形成され、その形がまるでスターウォーズのに登場する”ミレニアムファルコン”そっくりになったことで話題になりました。
Why is there such interest in periodic Comet 12P/Pons-Brooks?
— BlueJ (@BlueJ11274903) March 5, 2024
Well, it's about the size of Everest, and it is also the likely parent of the Draconids. For now it has an uncanny resemblance to the Millennium Falcon with beautiful trailing horns quipping it the devil's comet. pic.twitter.com/aXR0OuUF09
彗星の仮符号(番号)を表します。彗星の発見順序を示す記号です。
彗星の発見順序は、年号と発見順の数字で表されます。例えば、2023年に発見された第1号彗星は「C/2023 A1」と表記されます。また、「C/」は彗星を示す記号で、「P/」は周期彗星を示します。
周期彗星は周期が200年以下の短周期彗星か、2度以上の出現が観測され番号登録された彗星です。
2024年4月、12P/ポン・ブルックス彗星が最大の明るさに
12P/ポン・ブルックス彗星は、2024年4月21日に太陽に最も接近する「近日点通過」を迎えました。その距離は約0.78天文単位。地球からは約1.61天文単位の距離まで接近する予定です。この時期に最大の明るさを見せると予想されています。
この彗星は、約70年周期で太陽系内を周回する周期彗星で、日本では4月上旬ころまで夕方の空に明るい木星のそばに肉眼で見えるか見えないかくらいの明るさで観測できましたが、現在は夕方の超低空にあり、北半球からみ見づらい位置となっています。
天文単位
地球と太陽の平均距離。約1億5千万キロメートル。
南半球で見え始めたポンス・ブルックス彗星(12P/Pons-Brooks).
— ichikawa yuichi (@clavius) April 19, 2024
とはいえ、日没直後の低空でかなり厳しい.#12P #PonsBrooks #comet #astro #astrophotographie pic.twitter.com/G5midUVvPz
スペインのカラル・アルト天文台とポン・ブルックス彗星
https://twitter.com/ObsCalarAltoComet 12P/Pons-Brooks at @ObsCalarAlto #comet stacked and edited with @SiriL_Official #Astrophotography #pentax pic.twitter.com/anyVsJdF1B
— Ruben Alguero (@alguero_ruben) April 16, 2024
彗星のバースト
12P/ポン・ブルックス彗星は、過去にも大きな明るさの変動(バースト)を繰り返してきた彗星として知られています。
この明るさの変動は、彗星核から放出される塵や氷の量に依存しており、正確な予測は難しいとされています。そのため、今回の接近においても、予想を上回る明るさになる可能性があり、天文ファンの間で大きな期待が寄せられています。
バースト
彗星は、太陽に近づくにつれて表面の氷が蒸発し、ガスや塵が放出されて明るくなります。時には、この放出が突発的に増大する現象が起こることがあり、これを「バースト」や「アウトバースト」と呼びます。
例えば、ホームズ彗星は2007年10月に約40万倍もの突発的な増光を示し、肉眼でも観測できるほど明るくなりました。このような大規模なバーストは非常に珍しい現象で、彗星の活動性の変化を示す重要な指標となります。
太陽観測衛星が捉えた”デビル彗星”
下の動画は、NASAの太陽観測衛星 STEREO-A 宇宙船が捉えた、ポン・ブルックス彗星の姿です。右画面外にある太陽からのCME(コロナのガス噴出)が渦巻く中、木星(中央左明るい星)のそばを通過する様子です。
Comet 12P/Pons-Brooks is about to make its closest approach to the sun (0.78 AU). NASA's STEREO-A spacecraft is monitoring the devil comet's progress. On April 12th it captured 12P passing by Jupiter just as a CME billowed into space.https://t.co/B6qLHga1yv pic.twitter.com/HogdBwSKTo
— Erika (@ExploreCosmos_) April 19, 2024
彗星の尾に折れ曲がりがあります。これは「切断現象」と呼ばれ、CMEの衝撃や太陽風の突風が原因で起こります。
2024年は、もう一つの明るい彗星が現れる
2024年には12P/ポン・ブルックス彗星のほかにも、もう1つの明るい彗星が現れる可能性があります。それは、”C/2023 A3 紫金山・アトラス彗星”です。この彗星は、2023年1月9日に中国の紫金山天文台で発見後、同年2月22日に南アフリカにあるATLAS望遠鏡で検出されたため、両方の観測所の名前から紫金山-アトラス彗星と名づけられました。
2024年秋に太陽に最接近する予定です。彗星の専門家の予想によると、C/2023 A3は最大で0等級程度(※)まで明るくなる可能性があり、双眼鏡や望遠鏡を使えば肉眼でも観察できるかもしれません。
0等級とは
1等星(1等級)より明る星を0等級と表します。0等級は1等星より2.5倍明るく、更に2.5倍明る星を-1等級と呼びます。2.5倍明るくなる事にマイナスの数が増えていきます。こと座のベガの明るさがちょうど0等級になります。
彗星の位置を知るには
明るい彗星の情報は天文雑誌や「星ナビ」などの天文サイトで位置情報を見ることができます。
また、スマホのアプリを入れれば、簡単に現在の位置や、この先の彗星の動きを正確に知ることができます。
ちなみに私は「SkyTonight」というアプリを入れています。他にも「Star Walk 2」「Stellarium Mobile」などがおすすめです。

彗星の魅力とは
彗星は、太陽系の形成過程で残された氷と塵の塊で、その姿は神秘的で美しいと言えます。特に、時折明るさが増す「アウトバースト」を起こす彗星は、その変化する様子に人々の関心を集めています。
12P/ポン・ブルックス彗星は、約70年周期で太陽系内を周回する珍しい彗星です。この機会に彗星の魅力を感じてみてはいかがでしょうか。