
米環境保護団体「SierraClub」が興味深い記事を掲載しました。
現代社会で進行する光害(ひかりがい)により、若い世代が星空との文化的なつながりを失いつつある実態を報告しています。
この問題は単なる環境問題ではなく、人類の文化的遺産の喪失にもつながる深刻な課題となっています。
https://www.sierraclub.org/sierra/young-people-are-losing-their-cultural-heritage-light-pollution
光害の現状 – 数字で見る暗闇の消失
増加し続ける夜空の明るさ
2023年に科学誌「Science」に掲載された研究によると、北米の夜空は毎年10%ずつ明るくなっています。
この驚くべきペースで光害が進行した場合、オリオン座の三ツ星のような明るい星座さえも見えなくなる可能性があります。
現在250個の星が見える場所に住む子供が成人する頃には、見える星の数はわずか100個にまで減少すると予測されています。
これは私たちの子供たちが、私たち世代が経験してきた夜空の美しさを知ることなく育っていくことを意味します。
文化的影響の実態
特に懸念されるのは、若い世代のZ世代(1990年代後半から2010年代前半生まれ)の多くが、満天の星空を見た経験がないという現実です。
記事では、ブルックリン出身の学生が流れ星を「映画の中だけのもの」だと思っていたというエピソードが紹介されています。
失われゆく文化遺産
先住民の知恵と星空
ナバホ族の公園レンジャー、ラヴィス・ヘンリー氏は、先住民文化における星空の重要性を指摘しています。
彼らにとって星空は:
- 季節の変化を知らせるカレンダー
- 儀式の時期を決める指標
- 農作物の植付け時期の目安 として機能してきました。
ハワイの伝統航海術への影響
プリンストン大学の学生ギゼル・ビッシュ氏は、ハワイの伝統的な星座航法について言及しています。
かつてハワイの人々は星を頼りに島々を航海していました。
しかし、都市化の進展により、そうした文化的遺産を次世代に伝えることが困難になっています。
解決への取り組み
ダークスカイ・インターナショナルの活動
光害対策に取り組む非営利団体「ダークスカイ・インターナショナル」は、以下のような対策を提唱しています:
- 暖色系の照明の使用
- 低ワット数の照明への切り替え
- 下向きの照明シールドの設置
これらの対策は、街路の安全性を保ちながら、星空の視認性を向上させる効果があります。
若者たちの挑戦
ピッツバーグ近郊に住む高校生エリオット・スミスは、屋外照明用のシールドを設計し、光害対策に取り組んでいます。
彼のような若い世代の活動家たちが、失われゆく星空を取り戻すための新しい解決策を模索しています。
アストロツーリズムの台頭
光害のない場所で星空を観察する「アストロツーリズム」が注目を集めています。
しかし、これは根本的な解決策とはなりません。
なぜなら:
- 移動のための時間と費用が必要
- すべての人がアクセスできるわけではない
- 日常的な星空との触れ合いが失われる
専門家の見解と今後の展望
ダークスカイ・インターナショナルは、世界中で「ダークスカイ・プレイス」の認定を行っています。
これは光害の少ない場所を保護・認定する取り組みです。
現在:
- 22カ国
- 200以上の場所
- フロリダ州とほぼ同じ面積 が認定を受けています。
まとめ – 私たちにできること
光害は、単なる環境問題を超えて、人類の文化的遺産の存続に関わる重要な課題です。
私たち一人一人が以下のような取り組みを始めることで、この問題の解決に貢献できます:
- 不必要な屋外照明の削減
- 適切な照明器具の選択
- 地域の光害対策への参加
- 星空文化の価値の再認識
私たちの子供たちが、満天の星空を見上げながら夢を語れる未来を守るために、今行動を起こす必要があります。
それは、人類の文化的遺産を守り、次世代に伝えていくための重要な使命なのです。