ギリシャ本土の西にあるセファロニア島は、樹木の保護と火災防止の取り組みが、意図せぬ副産物として暗闇の空を保全することにつながったという記事を紹介します。

Green Forests and Dark Skies in Cephalonia / NASA Earth Observatory

セファロニア島は、ギリシャの7つの主要なイオニア諸島の中で最大で、面積は773平方キロメートルです。この島のカルスト地形には、洞窟、陥没穴、地下河川が豊富です。しかし、上から見ると、森が際立っています。

光害マップでみると、多少の光害はあるものの、確かに海に囲まれていて星がよく見えそうな場所です。

セファロニア島周辺の光害:https://www.lightpollutionmap.info/s/aVb6rrE5cUOJS6NpbseAXg

夜間の立ち入りを禁止に

アイノス国立公園は、主にモミの森を守るために1962年に設立されました。

公園の中心部にある緑の大部分は、1838年にギリシャ固有の新種として分類されたセファロニアモミ (Abies cephalonica) です。黒松 (Pinus nigra) も混在しており、様々な種類の低木も生息しています。

火災は、公園のモミにとって最大の脅威です。この可燃性の木々は、風が多く乾燥した微気候の中で、燃料となる草木が豊富に生息しています。火災を防ぐため、公園への夜間の立ち入りは制限されています。

この制限は、公園の夜空を特別に暗く保ち、地域の生態系と星見の機会を保護するという副次的な効果も生んでいます。(夜間の訪問者がいないため、公園には人工照明が設置されていません)

ギリシャで最初の国際ダークスカイパークに

それでも、アイノス山公園外にある通信塔の照明や、セファロニア島の首都であるアルゴストリなどの近くの町の照明施設からの人工光が一部見られます。

公園職員と暗闇の専門家は、数年間かけて光害の測定を行い、照明器具の更新を行い、啓発プログラムを実施しました。2023年6月、アイノス国立公園は、ギリシャで最初の国際ダークスカイパークとなりました。

「アストロナイト」を開催

ダークスカイ(暗闇の空)は、島の多くの植物や夜行性動物にとって重要です。例えば、ビーチに巣を作るアカウミガメの稚魚は、人工光によって方向感覚を失うことがあります。

また、ダークスカイは、夜間の星空観測者にも恩恵をもたらします。

公園では現在、予約制の「アストロナイト」を開催しており、許可を受けた訪問者は夜間に入園し、星明かりや月の光など自然光に照らされた星空を体験することができます。

セファロニア島の暗闇の空の保全は、意図せぬ結果でしたが、自然と人間の共存の良い例と言えるでしょう。

ダークスカイの保全に取り組む

この取り組みは、日本でも参考にできるものだと思います。日本では、近年、光害が深刻な問題となっています。人工照明が夜空を明るく照らし、星空を楽しむことが難しくなってきているのです。

セファロニア島のように、ダークスカイの保全に取り組むことで、自然環境を守り、人々の生活の質を向上させることが可能になるでしょう。

具体的には、以下の取り組みなどが考えられます。

  • 照明器具の光害対策
  • 屋外照明の適正な利用
  • 光害の啓発活動

これらの取り組みを通じて、日本でもダークスカイの保全を進め、自然と人間が共存する社会を実現していきたいものです。