マヨ州の住民たちが成し遂げた、美しく生態学的にも責任ある取り組み

夜空を見上げて天の川を見たのはいつですか?

多くの都市住民にとって、それは遠い記憶か、あるいは一度も経験したことがないかもしれません。

アイルランド・マヨ州の小さなコミュニティが、失われつつある「夜の闇」を取り戻すために立ち上がりました。

The Irish Timesが12月27日に報じたこの記事は、光害(ひかりがい)という現代社会の大きな問題に対して、地域住民が協力して実現した画期的な解決策を紹介しています。

その成功例は、世界中の都市や地域に希望を与えるものとなっています。

https://www.irishtimes.com/environment/2025/12/27/light-pollution-is-surprisingly-straightforward-to-fix-when-communities-work-together


失われた夜空:光害の深刻な実態

動物学を学ぶ若き学生だった筆者が初めてマヨ州のフィーア湖畔に立った夜、そこには圧倒的な天の川の光景が広がっていました。

ダブリンの「永遠の明るさのドーム」の下で育った筆者にとって、それは別世界への入口を開くような体験だったといいます。

しかし現在、このような体験は急速に失われつつあります。

光害は年間10%のペースで増加しており、世界人口の83%が光害に汚染された空の下で暮らしています。さらに衝撃的なのは、空の明るさが8年ごとに2倍になっているという事実です。

人工光は人間を含むほぼすべての生命に悪影響を及ぼします。

野生動物の移動、摂食、繁殖、そして何百万年もかけて進化してきた昼夜のリズムを混乱させる「感覚的汚染物質」なのです。

私たちの目の奥には、日光の短い青色波長に特に反応する色素を含む細胞があり、青い光を感知すると脳の主時計に「昼間だ!目覚めよ!」という信号を送ります。

同時に、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制してしまうのです。

その結果、睡眠障害、がんリスクの増加、肥満、心臓病、うつ病、不安障害といった健康被害が確認されています。

光害は単なる美的な問題ではなく、公衆衛生上の深刻な課題なのです。


ニューポートの挑戦:教会の照明改革プロジェクト

マヨ州在住のジョージア・マクミランは、この問題に立ち向かった先駆者です。

彼女は2016年にアイルランド初の国際ダークスカイパーク(International Dark Sky Park)を北西マヨ州に設立しました。

150平方キロメートルに及ぶ大西洋の湿地帯、山々、森林が広がるバリクロイとネフィンでは、数百万の星々を肉眼で観察できます。

しかし、農村部の町や村が拡大するにつれ、人工光の輝きも避けられず増加していきます。

マクミランは、ダークスカイパークに最も近い町であるニューポートの住民たちと協力して、光害を抑制する取り組みを始めました。

その象徴的なプロジェクトが、聖パトリック教会の照明改革です。

町を見下ろす丘の上に建つこの教会には、ハリー・クラークによる「最後の審判」のステンドグラスがあります。

2017年12月、教会に強力な投光器が設置され、白い光の束が空に向かって放たれるようになりました。

マクミランは夜間に投光器のまぶしさに対処するためにサングラスをかけなければならず、高齢の教区民の中には光で一時的に目が見えなくなったと訴える人もいました。

地元の司祭やコミュニティと協力して、マクミランは照明デザイナーによる代替案の開発資金を確保しました。2022年4月、国際的に称賛される受賞歴のある照明デザイナーで、暗闇、エネルギー効率、より思慮深い都市照明の強力な支持者であるウェックスフォード在住のケレム・アスフォルグルがプロジェクトに参加しました。

教会の変貌は驚くべきものでした。

まぶしい投光器は撤去され、天から降り注ぐような光の効果を生み出す繊細な照明に置き換えられました。

アスフォルグルはプロジェクターを使用してハリー・クラークの窓の画像を地面に投影し、すべての照明は下向きに設置され、午前1時に消灯されるようになりました。

以前の終夜照明と比べれば大きな改善です。

教会はこれまで以上に美しく見えるだけでなく、二酸化炭素排出量は2トン削減され、光害は半減しました。

このプロジェクトは国際的な称賛を獲得しています。


インターネット上での反応:世界が注目する成功事例

ニューポートの取り組みは、環境保護や天文学に関心を持つ人々の間で大きな話題となっています。

特に注目を集めているのは、このプロジェクトの「実現可能性」です。

多くのコメンテーターが「特別な技術や莫大な予算がなくても実現できる」という点を評価しています。

ある環境活動家は「水質汚染や大気汚染と違って、光害は最も簡単に修正できる汚染だ。夜に散歩して、何がついているか確認し、それを消すだけでいい」とツイートし、多くの共感を集めました。

一方で、「夜間の安全性」について懸念する声もあります。

特に女性からは「暗い道を歩くのは不安」という意見が寄せられています。

しかし記事が指摘するように、科学的証拠は人工照明が私たちをより安全にするという考えを支持していません。

むしろ適切に設計された照明が重要であり、無闇に明るくすることが安全につながるわけではないのです。

また、天文学愛好家や写真家たちからは「このような取り組みが世界中に広がってほしい」という切実な願いが表明されています。

彼らは都市部での星空観察がほぼ不可能になっている現状を嘆き、ニューポートのような「ダークスカイパーク」の存在が貴重な文化的・教育的資源であると主張しています。


光害対策がもたらす多様な恩恵

光害削減の利点は、単に星空が見えるようになることだけではありません。

人工照明は河川の昆虫や大西洋サケなど、水生生物にも深刻な影響を与えています。

夜行性の昆虫は光に引き寄せられて繁殖サイクルが乱され、それを餌とする動物たちにも連鎖的な影響が及びます。

さらに、エネルギー消費の削減という経済的メリットも見逃せません。

ニューポートの教会プロジェクトでは、二酸化炭素排出量が2トン削減されました。

これを全国、全世界規模で実施すれば、気候変動対策にも大きく貢献できます。

そして最も重要なのは、人間の健康と幸福への影響です。

適切な暗闇は質の高い睡眠を促し、メンタルヘルスの改善にもつながります。

記事の筆者が述べるように、「暗闇を受け入れることは贈り物」なのです。

夜通しの常時照明は汚染であり、暗闇の驚異、そして日光をより鮮やかに感じさせるコントラストを私たちから奪っているのです。


ダークスカイパークとは何か

国際ダークスカイ協会(International Dark-Sky Association)が認定するダークスカイパークは、光害から保護された特別な地域です。

認定を受けるには、優れた星空の質を維持し、光害削減のための厳格な基準を満たす必要があります。

世界には現在200以上のダークスカイパークが存在し、観光資源としても注目されています。

アメリカのデスバレー国立公園、ニュージーランドのアオラキ・マッケンジー、スコットランドのガロウェイ・フォレストパークなどが有名です。

日本でも、沖縄県西表石垣国立公園が2018年にアジア初の国際ダークスカイパークに認定されました。

これらの地域では、天文学教育プログラムや星空観察ツアーが実施され、地域経済の活性化にも貢献しています。

「星空観光」という新しい観光形態は、環境保護と経済発展を両立させる持続可能なモデルとして期待されています。


まとめ

アイルランド・マヨ州ニューポートの事例は、地域コミュニティの協力と適切な専門知識があれば、光害という現代の環境問題に効果的に対処できることを示しています。

美しさ、生態学的責任、経済性を同時に実現したこのプロジェクトは、世界中の都市や町のモデルケースとなるでしょう。

新しい年を迎えるにあたり、私たち一人ひとりができることがあります。

自宅の照明を消すか暗くする、地元の自治体や学校、スポーツクラブに同様の対策を求める——これらの小さな行動が、私たち自身と周囲の生命すべてにとって、より健康的な環境を作り出します。

そして何より、失われつつある夜空の美しさと、新しい感覚的世界への扉を開くことができるのです。

星々に満ちた夜空を取り戻す旅は、すでに始まっています。